特許 令和6年(行ケ)第10076号「燃料及びその配合組み合わせ」(知的財産高等裁判所 令和7年10月16日)
【事件概要】
拒絶査定に対する不服審判請求を明確性要件違反により不成立とした審決を知財高裁が支持した事例である。
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【争点】
請求項1(a)~(c)の記載の明確性
「【請求項1】
燃料として有用な配合組み合わせであって、前記燃料を、(L)+(M)+(H)からなる一連の炭化水素の構成要素を組み合わせて得られた組み合わせを、合計100体積%に基づいて、
(a) (L)%+(M)%+(H)%=100%、
(b) (L)%=(H)%=(100%-(M)%)/2及び
(c) (M)%がゼロ(零)または100%未満であるならば、前記「100%-(M)%」の引き算の余りは、(L)%/(H)%で、0.4/1~0.6/1の比となり、または(M)%が30~70%であるならば、前記余りは、(L)%/(H)%で、0.9/1~1/0.9の比もしくは0.4/1~0.6/1の比となるように決定して形成し、
(d) 前記組み合わせは、・・・を有し、
(e) (L)は、・・・を与え、
(f) (M)は、・・・を与え、
(g) (H)は、・・・を与えるものである
ことを特徴とする配合組み合わせ。」
【結論】
そこで検討すると、請求項1における「(a)…(b)…及び(c)…」との記載は(a)(b)の各事項と(c)の事項を接続詞「及び」で接続しており、日本語における接続詞「及び」の通常の用法に照らすと、(a)(b)(c)の各条件を同時に満たすことを意味するものと解される。
また、本願明細書の記載においても、上記「及び」が別異の意味であるものと理解し得るような記載はない(段落【0068】等)。加えて、請求項1の実施例(段落【0064】【0066】)として(L)(M)(H)の配合割合が示されている記載(段落【0093】【0094】【表1】)を検討しても、(M)%=0.28/1.69≒0.165≒17%、(L)%/(H)%=0.69/(0.03+0.69)=0.958=96%となるから、(c)の条件を満たしていない((M)%が17%であるならば、(c)の条件中「(M)%が30~70%」の場合には該当せず、「(M)%がゼロ又は100%未満」の場合にのみ該当するから、「100%-(M)%」の引き算の余りは、(L)%/(H)%で、0.4/1~0.6/1となるよう決定して組成することになるはずである。)。当該実施例は、請求項1に記載された本願発明に対応する例となっておらず、請求項1における(a)(b)(c)の各条件の関係性を説明し、又は示唆するものとはいい難い。
そもそも、請求項1において、❶(b)の「(L)%=(H)%=(100%-(M)%)/2」は、「(L)%/(H)%=1」となることを意味する「(L)%=(H)%」との条件を特定していることになる。これに対し、❷(c)の「(M)%がゼロ(零)または100%未満である」場合又は「(M)%が30~70%である」場合に、「(L)%/(H)%」が「0.4/1~0.6/1」の範囲となる旨の記載は、これらの場合に「(L)%/(H)%=1」とならないような比率で(L)と(H)を組成することを示すものである。結局、❶と❷を同時に満たす(L)%と(H)%の組合せは存在しない。
すなわち、請求項1における「(a)…(b)…及び(c)…」との記載は、(a)(b)(c)の各条件を同時に満たすことを意味するものと解される一方、(b)の条件(❶)と、(c)の条件(❷)が同時に満たされることはない。
そうすると、本件補正後の特許請求の範囲請求項1に記載された本願発明の技術的範囲は、これを一義的に理解することはできず、請求項1の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確といわざるを得ない。
【コメント】
特許請求の範囲に両立しないパラメータが記載されており、「第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確」と判断され、特許法36条6項2号に規定する明確性要件に違反すると判示されている。
また、拒絶審決にどうしても納得できなかった原告(出願人)は、「本裁判所は、審判部審判官および特許庁審査官に対し、(i)根拠のない拒絶を繰り返さないこと、または(ii)本出願および関連する分割出願に関して新たに追加された明らかに根拠のない拒絶を主張しないことを指示する。」との訴えも併せて行ったが、『対象となる各行為は、いずれも行政事件訴訟法3条2項の「処分」には該当しないから、同条6項の「義務付けの訴え」の要件を満たさない。』と判示して、当該訴えは却下されている。